|
【SOUMA AGENCY】───通称、【SA】。いわゆる総合広告代理店である。広告制作、媒体購入、ブランド構築、マーケティング調査、イベントのプロデュース、セールスプロモーションの実施などを全国・世界的規模で行っている、外資系の企業の一つだ。俺──『神坂樹(かんざかいつき)』は、そこへ派遣されてきた大手ベンチャー企業の管理職だった。マルチメディア部門で二十台という若さながら役職を手にした俺は、かつてゲームソフトウェア開発に携わっていた経験もあり、その腕を見込まれてさっそく数々の仕事を任された。そして今回俺に一任された業務内容は、とあるゲーム製作会社の面倒を見ることだった。どうやら何がしかの事情で開発の立ち行かなくなった連中が、庇護を求めて頼ってきたらしい。よくよく調べてみれば、スタッフそのものは思いのほか経験豊富な連中だ。営業面が弱そうだが、むしろそこはありがたい。俺の現在の仕事はこういった連中の売り出しであり、『人気や技術力はあるが営業に疎い』というのは、俺にとって格好の獲物なのだ。しかもスタッフの中には若い女がいる───。上手くすれば、俺の得意とする手段で意のままに操ることも可能だろう。俺はまだまだ現在の地位で満足などしていない。ゆくゆくは金と名前で世界を動かし、すべてをこの手に牛耳るのが目標だ。とりあえずは連中を手中に収めて上手く使えば、俺がさらにのし上がるための格好の武器になる───。俺は好色かつ不敵な笑みを浮かべ、さっそく連中へと接触を試みた───。
|