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異世界召喚チート。そんなものは、空想世界の中だけだと思っていた。三年前までは。魔王とその軍勢によって蹂躙され続けていた異世界『ディーニア』により、突如として召喚された少年『羽良悠樹』。この三年間において、大賢者、と呼ばれるまでになった彼は、今一人の学生としてその門の前に立っていた。勇者スキャナのパーティーの一人として、その知識と魔力とを駆使し、苦難の旅の末に魔王討伐に成功した彼が元の世界へと戻れる術は未だ見付かっていない。恋仲となり、本来ならば結ばれるはずだった勇者は、魔王討伐後の権益を狙った貴族達の策略によって裏切られる形となり、最早ただの他人でしかない。あまりにも大きすぎる功績を残した彼に与えられたものは、いくつもの失意と失望。そんな彼が、腐敗貴族達を腹いせに蹂躙しまくった後に望んだもの。それは、この三年の間に失ってしまった、学生時代の生活だった。大賢者でも勇者の仲間でもない。ただの一人の学生として、友人達と笑い合う何気ない日々。日本に帰れないというのなら、せめてこの世界で、その時間を取り戻したい。その願いは受け入れられ、彼は今、その学園の門の前に立っている。ごく普通の一市民『ユウキ=ハラ』として。新たな春。一学生としての生活の始まり。見知らぬ友人達とのたわいない会話。だが、そんな日々の再来に胸を高鳴らせる彼を待ち受けていたのは……。「よ。俺、先日からここの教員。お前の担任な」「ふふ。今日からクラスメイトですね。よろしくお願いします、ユウキさま♪」共に戦った勇者パーティーの一員にして王国の第二王子と、悠樹を召喚し、その詫びとして自らを捧げることすら厭わない第一王女の姿だった。そして挫けかけた彼の前に現れる更なる強敵。「ユウキ=ハラ……私は、かの大賢者にこのすべてを捧げています!」かつては将来を誓い合い、けれど離れることとなった一人の少女。清冽なる勇者、スキャナ=フォン=タニム。全学生の前で高らかに宣言されたその言葉が、悠樹の生活から平穏という言葉と唇とを奪い去る。そして始まる、大英雄の少年を巡る大賑わいな、ワルキューレ達による恋愛バトル。これが本当の異世界召喚チートハーレムストーリー。今、開幕。
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