サナトリウムの雌豚

そう、少女は生きながらに、「雌豚」とされてしまったのである。仄暗い昭和の歴史の最初の二十年。世界の全てを巻き込んだ戦争が終わりに差し掛かろうとしていた、最後の数ヶ月。戦争の残照ともいえる忌まわしい研究は未だに続いていた。「傷痍軍人ノ前線復帰ノ為ノ予備研究」帝国軍の秘密機関で行われていたその研究は、戦いに傷つき、人としてすら生きることをままならぬものとなってしまった者達を復活させるための研究でもあり……そして、それらを最後の肉の一片まで使い潰す研究でもあった。幸いにして、そして不幸にして、その研究の「成果」はただ一人の少女でしかなかった。零号被検体・零(れい)彼女はとある重病を生来背負って伊豆にある修道会系サナトリウムに収容されていた少女だった。余命幾ばくもない彼女が、この全てが終わろうとしていた季節まで生きていられたのは若き天才科学者、尾崎のおぞましい研究の成果のため。彼は先天的な免疫不全を利用して、ヒトと異種動物間の臓器移植を実現しようと彼女を利用した。その結果……。彼女は命と引き替えに、少女としての全てを失うこととなってしまった。尾崎が移植に利用したのは、人間とその臓器の配置と大きさが似通っている「豚」。そう、少女は生きながらにして、「雌豚」とされてしまったのである。そしてこれは、その不幸な少女と、その周囲で起きた出来事の、最後の数ヶ月間の記録である。
タイトルサナトリウムの雌豚
カテゴリアドベンチャー
レーベル黒雛
メーカー黒雛
価格2,980
発売日-0001年11月30日

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