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海洋開発が現在より格段に進んだ社会。人口増加、食糧増産、環境制御の三つを解決するために海上都市、海中都市計画が次々と策定され、各国は競って海に向かった。同様に宇宙開発も進んでいるが、現時点では海洋開発が中心。メタンハイドレードの産業化が進み、巨大な海洋面積を誇る日本は海洋先進国として多くの留学生を受け入れる立場となっている。しかし、いつでも光があれば影があるもので。開発初期にもてはやされ多くの観光客が訪れていた太平洋側に浮かぶ小さな島『凪ノ島(なぎのしま)』は、いまや小さな補給港があるだけの忘れられた島になっていて、昔栄えた炭鉱町のような様相を呈していた。島民たちは島を復興するべく、まずは若者たちを呼び込もうと、国から助成金を受けて海事訓練校を設立することにした。凪ノ島は台風の通り道にあるものの、危険の少ない人工環境が中心となり、もともと航路から少し外れていて他の船舶と遭遇する危険がなく、過酷な環境を周辺に備えているだけでなく、近海にすべての海洋訓練が行える機構環境を持っていて、訓練校として最適な場所にあるのだ。こうして、新たに設立された『公立凪ノ海事訓練校』には、現在財政の豊かな国家や自治体の援助で非常に安くなった学費を目当てに、余り裕福でない、だけど海での活躍を願う若者たちが集まった。一期生は男子10名、女子5名の計15名。そう、たったの15名しか集まらなかったのだ。しかも、そのうち2名は島の人間。学校の設備や機材のほとんどは10年前の最新式。もともと本土から島にやってきた観光客の安全を守るプロが使用していたもので、実践には使えるものの、初心者には扱いづらく、学生たちは訓練だけでなく設備や機材の扱いにも悪戦苦闘することに。学校での最終目標は、海難救助の国家試験で最高のSランクをとること。このSランクに何人合格するかで、学校の格付けがされるといっても過言ではないので、将来多くの後輩に来てもらうためにも、できるだけ高ランクを目指すことになる。当初は、頼りない主人公たちだったが、優しくて気のいい島の人たちに囲まれながら、主人公の努力によって次第に結束し、いくつもの訓練や突発事故、人間関係の軋轢を乗り越えて成長していく。青い海と、ちょっと未来の世界で織りなされる、優しい人間関係を描く物語。
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