義妹だからできること、妹じゃないとダメなこと。
「赤の他人との兄妹ごっこ。それならガマンする必要もないですよね」出逢ったばかりの少女が、屈託のない笑顔を浮かべながら朗らかに言う。まるで、気心の知れた友人同士が交わす、学校帰りに道草に誘うような気安さで。お気に入りの詩集を読み上げるように、少女は可憐な仕草のまま、僕を誘う。実の妹に恋した僕に向かって。実の妹に欲情するような僕に対して。決して他人にバレてはいけないはずの、僕の秘密を知る少女は、蜜のような脅迫を仄めかす。「本当の妹にはできないこと、わたしがしてあげます」そうして、その日。僕は彼女を組み敷いた。たった一度だけの過ち。ほんの一回だけの妥協。ほんの一時だけの馴れ合い。それで、僕たちの関係は終わるはずだった。それで、僕たちは他人同士に戻るはずだった。だけど。その時の僕は、知る由もなかった。「あらためてよろしくお願いしますね。お義兄さん」一期一会だと思った少女が、まさか僕の義妹になるなんて…これは、妹に恋するダメな僕と。僕に懐きすぎる困った義妹と。そんな僕らの関係に、ヤキモキする普通の妹の物語。きっと、それだけのはず。たぶん。 |
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